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「説明しても伝わらない」の正体。ランキング上位の医院が実践する「視覚的クロージング」

前回の記事では、院長先生が「ドクター・リーダー・経営者」という3つの重責を全うするために、デジタルを活用して自分自身の「時間」を創出する重要性についてお伝えしました。しかし、いざデジタル化、特に「動画による患者啓蒙」を検討する際、多くの先生が次のような不安を口にされます。

「動画を見せるだけで、本当に患者さんは納得してくれるのか?」
「結局、私が直接熱意を持って説明した方が伝わるのではないか?」

結論から申し上げれば、ランキング上位の医療法人が動画を徹底活用するのは、単なる「手抜き」や「時短」のためではありません。そこには、人間の脳が情報を処理する仕組みを逆算した、極めて緻密な「視覚的クロージング」という戦略が存在します。今回は、なぜ一生懸命な説明ほど伝わらないのか、その正体と解決策を紐解きます。


1. 「説明しても伝わらない」を招く3つの心理的壁

先生や衛生士さんがどれほど丁寧に説明しても、患者さんが「検討します」と硬い表情で帰ってしまう。この現象の裏には、言葉によるコミュニケーションだけでは決して乗り越えられない「3つの壁」が存在します。

1) イメージの不一致(情報のズレ)

例えば「根管治療」という言葉を聞いて、患者さんの脳裏に浮かぶのはどのような映像でしょうか?多くの患者さんは「歯を削る何か」「痛そうな何か」という漠然とした恐怖を抱くだけです。歯科医師が「根管の清掃」を語る一方で、患者さんは「自分の歯がどうなっているか」を1ミリもイメージできていません。このイメージの乖離が、不信感の種になります。

2) ワーキングメモリの限界(情報の過多)

歯科の治療計画は、解剖学的知識や材料学など、専門性の塊です。これらを言葉だけで説明しようとすると、患者さんの脳の処理容量(ワーキングメモリ)はすぐにパンクします。人は理解できない情報が続くと、無意識に脳をシャットダウンさせます。その結果、最後に残るのは「何かよくわからないけれど、高いし大変そうだ」というネガティブな感情だけです。

3) 説得への防御本能(押し売り感)

対面で熱心に説明を受ければ受けるほど、人は心理的に「断りにくい状況」に追い込まれたと感じます。この「説得されている」という感覚は、患者さんの防衛本能を刺激し、「一度持ち帰って冷静になりたい」という逃避行動を引き起こします。熱意が裏目に出てしまう、悲しい逆転現象です。

2. 視覚情報は「6万倍」の速さで納得を作る

ランキング上位の医院が実践する「視覚的クロージング」は、これら3つの壁を軽々と突破します。なぜなら、人間の脳は、文字や言葉による情報(言語情報)よりも、視覚情報(画像・動画)を圧倒的に速く、深く理解するようにできているからです。

研究によれば、視覚情報は言語情報の約6万倍の速度で脳に処理されます。さらに、聞いた情報は3日後には10%しか記憶に残っていないのに対し、視覚と一緒に受け取った情報は65%も記憶に定着するというデータもあります。

動画がもたらす「客観的納得」

「むし歯が進行しています」という言葉よりも、3Dアニメーションでエナメル質から象牙質、そして神経へと病巣が広がる様子を見る方が、患者さんは「今すぐ治療が必要だ」と直感的に理解します。
重要なのは、これが「先生個人の意見」ではなく「医学的な事実」として提示される点です。動画という第3のメディアを介することで、押し売り感を消し去り、患者さん自身が「自分で気づき、自分で選ぶ」という心理状態を作ることができるのです。

3. 説明の「ピーク」を動画に任せるという新常識

成約率の高い医院では、カウンセリングのプロセスを「動画」と「人間」で鮮やかに分担しています。

これまでのカウンセリングを「10」の工程とすると、そのうちの「8(基礎知識、治療の必要性、メリット・リスクの解説)」を動画に委託します。待合室やユニットサイドで、患者さんにあらかじめ「良質な情報」に触れておいてもらうのです。

すると、先生やスタッフが向き合う頃には、患者さんのリテラシーはすでに一定のレベルまで引き上げられています。残りの「2(個別の悩みへの回答、最終的な背中押し)」を丁寧に行うだけで、クロージングは驚くほど静かに、そして確実に完了します。

「先生、さっきの動画を見てよく分かりました。私にはこの治療が必要ですね」
患者さんからこのような言葉が出るようになれば、医院の経営は劇的に安定し、スタッフのモチベーションも最高潮に達します。


まとめ

「説明しても伝わらない」のは、先生の熱意が足りないからではありません。情報の「届け方」という仕組みに問題があっただけなのです。視覚情報を戦略的に活用し、患者さんの理解を先回りして助けること。それが、選ばれる医院になるための絶対条件です。

さて、次回は第70記事目の節目となります。これまでお話ししてきた「待合室の活用」や「視覚的クロージング」などを踏まえ、具体的にどのようなステップで医院の仕組み化を進めるべきか、そのロードマップを整理してお伝えします。