前回の記事では、売上ランキング上位の医療法人が「説明の標準化」に注力し、属人化しない経営を築いている舞台裏をお伝えしました。仕組み化によって土台を固めた彼らが、次に戦略的に取り組んでいるのが「待合室の収益化」です。
先生の医院では、待合室が単なる「診察を待つための場所」になっていませんか?実は、待合室の設計を少し変え、適切な情報を届けるだけで、フロスや歯間ブラシ、キシリトールといったセルフケア製品の物販売上を劇的に引き上げることが可能です。今回は、患者さんが「つい手に取りたくなる」環境作りの秘訣を紐解きます。
1. 待合室は、口腔内を変える「気づき」のショールーム
物販が伸び悩む医院の共通点として、「受付の奥の棚に商品を並べているだけ」というケースが多々見受けられます。しかし、患者さんにとって歯科専用品は、どれを選べば良いか判断が難しいプロの道具です。ただ並べるのではなく、待合室を「気づきを与えるショールーム」として定義し直す必要があります。
例えば、フロスや歯間ブラシをただ並べるのではなく、以下のような工夫を加えます。
- 「お悩み別」のグルーピング: 「歯並びが重なっている方へ(フロス)」「隙間の汚れが気になる方へ(歯間ブラシ)」といった、患者さんの自覚症状に寄り添ったポップを添える。
- キシリトールの「健康習慣」提案: 単なるガムとしてではなく、「歯を強くする新習慣」として、そのメカニズムを視覚的に提示する。
「売ろう」とするのではなく、「今の悩みを解決する道具を教える」というスタンスが、患者さんの信頼を生み、結果として数字に繋がります。
2. フロスや歯間ブラシの「必要性」を動画が伝え続ける
患者さんが待合室で過ごす「待ち時間」は、実は最も健康意識が高まり、新しい情報を受け入れやすいゴールデンタイムです。この時間に何を見せるかで、その後の物販成約率は劇的に変わります。
ここで威力を発揮するのが、音声や動きのあるデジタルサイネージ(動画)です。特に、フロスやキシリトールといった「重要性はわかっているけれど、習慣化しにくいもの」こそ、映像での啓蒙が効果を発揮します。
「なぜ必要なのか」を視覚的に刷り込む
チェアサイドで「フロスを通してください」と言われても、患者さんの心には「面倒くさい」「使い方が難しそう」という感情が先に浮かびがちです。しかし、待合室で「歯ブラシだけでは汚れの6割しか落ちない事実」や「フロスを使わないことで起こる隣接面カリエスの説明動画」をあらかじめ目にしていればどうでしょうか。
ユニットに座る頃には、患者さんの心の中に「今のままではマズイ」という小さな危機感と、「自分に合うフロスの使い方を知りたい」という欲求が自然と芽生えています。スタッフが一人ひとりに1から説明しなくても、動画が勝手に「欲しくなる理由」を教育してくれるのです。
3. 失敗する物販・成功する物販の分かれ道
物販を強化しようとして、かえって患者さんの満足度を下げてしまう医院もあります。その差は「売り込み」か「提案」かにあります。スタッフがノルマのように商品を勧める環境では、患者さんは心理的距離を置いてしまいます。
成功している医院では、「動画が啓蒙し、患者さんが問いかけ、スタッフが答える」という理想的なコミュニケーションラインが確立されています。
- 患者さん: 「さっき動画で見たフロス、私のような歯並びでも通せますか?」
- スタッフ: 「よく気づかれましたね!実はフロスにもいくつか種類があって、今の〇〇さんの歯並びならこちらのワックスタイプがおすすめですよ」
このように、患者さん側から相談が始まる流れを作ることができれば、スタッフは「売り込むストレス」から解放され、プロフェッショナルとしての助言に専念できます。この循環が、医院全体の活気と物販売上の向上を両立させるのです。
4. 物販の活性化がもたらす「真のメリット」
物販利益の向上は、単なる増収以上の価値を医院にもたらします。それは、患者さんの「セルフケアの質」が上がることです。
適切なフロスを使い、キシリトール習慣を取り入れた患者さんは、次回の定期検診で口腔内の改善を褒められる機会が増えます。すると、通院が「怒られる場所」から「褒められる場所」へと変わり、リコール率(再診率)の向上にも寄与します。待合室での動画啓蒙は、物販を入り口にして、長期的なファン作りへと繋がる一石二鳥の戦略なのです。
まとめ
待合室を「つい買いたくなる環境」に変えるポイントは、配置の工夫と、何よりも「患者さんのリテラシーを高める視覚情報」の活用にあります。フロスや歯間ブラシの価値を、スタッフに代わって動画に伝えてもらう。その小さな仕組み作りが、医院の経営を大きく変えるきっかけになります。
次回は、さらに一歩進んで、「小児歯科や矯正の集患に効く、親御さんの信頼を勝ち取る情報提供」について詳しくお届けします。
