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「なんとなく」の届出から卒業する。基本診療料の再定義で見直す、医院の収益構造と責任

令和8年度の診療報酬改定において、歯科の改定率は+0.31%とされました。しかし、実際の医院経営への影響は一律ではなく、初診・再診の比率、施設基準の届出状況、ベースアップ評価料や物価対応料の算定状況によって驚くほど大きな格差が生まれます。今回の改定は、単に目先の点数の微増・微減を追いかけるためのものではありません。物価高騰、人材不足、医療DXの加速といったマクロ環境の激変に対し、国が提示した「歯科医療の構造改革」への明確なメッセージなのです。その証拠に、引き上げの一方で「適正化・効率化」として▲0.15%のマイナス改定も同時に断行されており、国は「必要な場所には手厚く配分するが、非効率な部分は削る」というシビアな切り分けを鮮明にしています。

特に、歯科初診料における機能強化や、電子的歯科診療情報連携体制整備加算、ベースアップ評価料、歯科技工所ベースアップ支援料といった体制評価項目では、施設基準の届出と維持管理が算定を行う上での大切なベース(基本要件)となります。これは単なる事務手続きではなく、「国が求める高い水準の医療提供体制を、自院が責任を持って維持・管理しているか」を問う、経営者としての重要な意思決定そのものです。「なんとなく」の届出や事務的な放置は、将来的に医院の存続基盤を根底から揺るがす致命的な経営リスクへと直結します。今回は、基本診療料の再定義から見直すべき、医院の収益構造と経営者の責任について解説します。

1. 拡大する格差:基本診療料の「未届出」が招く複利的な収益毀損

初診料・再診料は、歯科医院において最も算定頻度が高い「経営の分母」です。今回の改定では、施設基準の届出を行っているか否かによる格差が、経営を揺るがすレベルで拡大しています。

1)届出の有無による基本点数の比較

今改定における、初診料・再診料の具体的な点数構造は以下の通りです。

  • 歯科初診料: 届出あり 272点 / 未届出 245点
  • 歯科再診料: 届出あり 59点 / 未届出 45点

2)「未届出」がもたらす恐るべき損失シミュレーション

届出を怠った場合の損失を、一過性のものと楽観視してはいけません。歯科初診料において「届出あり」と「未届出」では1件あたり27点(270円)の差が生じ、再診料にいたっては14点(140円)もの差が生まれます。

例えば、年間1,000名の患者さんが来院し、1人あたり平均5回の来院(初診1回+再診4回)があると仮定した場合、医院が被る損失は以下のようになります。

  • 初診ロス: 27点 × 1,000人 = 27,000点
  • 再診ロス: 14点 × 4,000回 = 56,000点
  • 年間合計損失: 83,000点(83万円のストレートな減収)

これは単なる「加算の取りこぼし」ではなく、医院の構造的な収益毀損です。基本診療料という土台を確実に守り抜くことこそが、経営者が果たすべき最低限の責任です。

2. 時代への適応:物価高騰と医療DXが組み込まれた新設項目

今回の改定は、インフレとデジタル化という外部環境の変化を基本診療料の仕組みにダイレクトに組み込んできました。これらの算定は、現代の医療機関が負うべき「社会的責任」の証明です。

1)歯科外来物価対応料の段階的増額

物価高騰に対する直接的な救済措置として、新設された「歯科外来物価対応料」(初診時3点、再診時1点)は、インフレの推移を見極める国の段階的アプローチを反映しています。令和9年6月以降は、所定点数の2倍(初診6点・再診2点)に引き上げられるスケジュールがすでに確定しています。確実に算定フローを構築すべき重要項目です。

2)セキュリティ対策の義務化とDX加算の厳格化

旧「医療情報取得加算」等を再編して新設された「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」(加算1:9点、加算2:4点)では、「サーバーセキュリティ対策」の要件化が大きなポイントです。サイバー攻撃のリスクから患者さんの情報を守る「防御の責任」が算定の前提となっています。
旧「医療DX推進体制整備加算」および「医療情報取得加算」は見直され、歯科では「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」として再編されました。ウェブサイトへの掲示や電子処方箋発行体制に加え、「マイナ保険証利用率30%以上」という高いハードルがクリアラインとして設定されています。適応できない医院は、患者さんからの信頼と収益の両面で淘汰されるリスクを負うことになります。

3. サプライチェーンを守る:ベースアップ評価料の継続と技工所連携

歯科医療従事者の確保が困難な時代において、ベースアップ評価料は、医療従事者等の処遇改善を診療報酬上で評価し、医院が継続的な賃上げに取り組むための財源を補完する仕組みです。今改定では「40歳未満の勤務歯科医師」や「事務職員等」に対象が拡大されました。

さらに注目すべきは、自院だけでなくパートナーである歯科技工所の処遇改善を支援する「歯科技工所ベースアップ支援料(1装置につき15点)」の新設です。算定にあたっては、令和8年度(3.2%)、令和9年度(さらに3.2%)の賃上げ目標にコミットし、毎年8月に「実績報告」を行う義務があります。この報告を怠れば加算は失効します。スタッフや外部パートナーの処遇改善は、算定する医院にとって、施設基準上・保険請求上の責任を伴う経営課題となりました。

まとめ

施設基準は「一度届け出れば終わり」ではありません。例えば、令和8年6月以降、歯科初診料の施設基準を維持するためには、「抗菌薬の適正使用に関する研修受講」が新たな要件となります。また、従来のSPT(歯周病安定期治療)と重症化予防治療が統合され、新たに「歯周病継続支援治療」へと再編されました。これらを見落とすと、名称変更に伴う算定漏れや、未届出による大幅減算の地雷を踏むことになります。

ホームページや院内での適切な情報発信、外来でのスムーズな案内を行うことで、医院の社会的責任の高さ(医療DXへの対応など)を地域に証明していきましょう。診療報酬改定という大きな変化の波を乗りこなすためには、院長先生が経営者として「次なる一手」をじっくり考えるための時間(リソース)の確保が何よりも欠かせません。
こうした日々のごく一般的な説明業務や情報発信を効率化し、院長先生が経営戦略に集中するための時間創出のツールとして、メデタシの動画資産を上手に活用するのもひとつの方法です。足元の収益基盤をしっかりと整え、持続可能な医院経営へ向けて一歩を歩み始めましょう。

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次回は、「薬剤説明を医院の信頼資産に変える。令和8年度診療報酬改定と処方コミュニケーションの実務対応」についてお届けします。

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